紫斑病(purpura):血小板減少性紫斑、 DIC症候群〔血管内血液凝固症候群〕

 紫斑病(purpura) は、皮内・皮下・粘頷下の出血を主体とした疾患で、皮内の小出血点〔点状出血(petechia)〕から、皮下の大きな出血〔斑状出血(ecchy-mosis)]まで種々の形をとる。鮮紅色→暗赤色→紫褐色→黄色→退色と変化。硝子圧(diascopic)にて退色しないことで、紅斑と区別し得る。

 血液〔血小板・凝固因子・異常蛋白〕、血管支持組織、血管内圧、血管炎などの種々の因子により発症、組織学的には、それぞれの特徴的変化の他に、初期には赤血球の血管外溢出(extravasation)、末期にはヘモジデリン沈着(haemo siderosis)が特徴的である。
 
1。血小板減少による紫斑

 A。二次的なもの:薬剤・化学物質〔ベンゾール・ピリン剤・重金属・麦角・抗腫瘍剤・染髪剤・バルビツール・サルファ剤・殺虫剤など〕、放射線、感染〔敗血症・チフス・猩紅熱・麻疹・肝炎・マラリアなど〕、 SLE、骨髄疾患[白血病・多発哇骨髄腫・骨髄線維症・再生不良性貧血・腫瘍転移]、牌腫、血管腫〔Kasabach-Merritt症候群〕。OB。特発性血小板減少性紫斑purpura idiopathica thrombocytopenica 〔ITP〕

  〔同義語〕出血性紫斑purpura haemorrhagica 〔Werlhof〕

  〔症状〕

  1)前駆症状:頭痛・発熱・全身倦怠感。

 2)皮疹:突然発し大小の出血斑が混在するが、比較的大きい〔morbus maculosusWerlhof〕。下腿伸側・上胸部に多いが、部位は一定しない。しばしば粘膜を侵し、結膜・口腔・鼻腔〔鼻血〕・腎〔血尿〕・腸〔下血〕・呼吸器・女子吐器に出血する。

 3)検査所見:血小板数減少〔10万以下〕と寿命短縮、出血時間延長、凝固時間正常、 Rumpel-Leede陽性。

 〔病因〕抗血小板抗体による自己免疫が多い。小児に多く上気道感染・ウイルス感染症に続発して一過性のもの〔急性型〕は感染アレルギーが、女子に多く多年にわたって寛解・再発を繰り返し、血小板数低下が常に続くもの[慢性型]は自己免疫が考えられている。

 〔予後〕良好、しばしば再発。まれに死亡。

 〔治療〕安静、止血剤、輸血、血小板輸血、ステロイド、髀摘、免疫抑制剤

2。 DIC症候群〔血管内血液凝固症候群disseminated intravascular coagulation〕

 〔同義語〕消費性凝固障害(consumption coagulopathy)、脱線維素性症候群(defibrination syndrome)

 〔本態〕凝固系活性化〔→血管内小血栓形成→血小板・フィブリノーゲンV・Ⅷ・X因子消費〕と、これに対しての二次的な線溶系の亢進が同時に起こる。

 〔基礎疾患〕幼小児では外傷、感染症〔とくに緑膿菌〕、巨大血管腫〔Kasabach-Merritt症候群433〕、一般に重症熱傷、ハチ等刺傷、悪性腫瘍、薬物中毒、手術、異常分娩、不適合輸血。

 〔皮膚症状〕創面からの出血、圧迫・注射・手術部からの出血、皮下の巨大な硬結

 〔中心壊死〕。

 〔その他の症状〕血圧低下性ショック、意識低下、肝・腎一消化器・心・副腎・睾丸・脳も侵され乏尿・呼吸困難等。

 〔検査所見〕①血小板減少[<5万]、②フィブリノーゲン減少〔100μg/ml以下〕、③血漿FDD上昇。

 〔治療〕①ヘパリン〔5、000~20、000単位点滴〕、②新鮮血・血小板輸血、③アスピリン

3。 血小板機能異常によるもの
血小板無力症、 Wiskott-Aldrich症候群


Side Memo
 Wiskott (1937)-Aldrich (1954)症候群:①伴性劣性遺伝で男児のみを侵す免疫不全症。②湿疹〔頭・顔・殿・屈側、アトピー性皮膚炎・脂漏性皮膚炎に似る〕、③血性下痢、④血小板減少〔紫斑・血性下痢・脳出血〕、⑤反復する感染症〔lgM低下・lgA・E高値・細胞免疫低下〕、⑥肝脾腫、⑦多くは10歳以下で死亡、⑧10%に悪性リンパ腫の合併。わが国で約40例。

凝固異常、毛細管支持組織脆弱化、蛋白代謝異常による紫斑 


凝固異常による紫斑
 
 凝固時間が延長する。

 A。血友病haemophilia : 劣性伴性遺伝〔ほとんど男子のみ〕。血漿中トロンボプラスチン生成因子である抗血友病グロブリン(anti-hemophilic globulin ; AHG)の欠如による。軽微外傷で出血斑・血腫を生じ、関節内出血は関節強直を来す。種々の亜型がある。

 B。プロトロンビン欠乏症:新生児メレナ、ビタミンK欠乏症。

 C。フィブリノーゲン欠乏症:肝疾患、妊娠、蛇咬症。

 D。電撃性紫斑purpura fulminans [Henoch 1887]:幼児を侵し、広範な出血を来す。脳にも出血し、脳症状・高熱を呈し、多くは死亡。猩紅熱・レ球菌性扁桃炎・水痘などの急性感染症に続発。第V因子低下、アンチトロンビン増加。 DIC症候群の一型。

 

 

蛋白代謝異常による紫斑

 クリオグロブリン血症、高グロブリン血症、マクログロブリン血症、クリオ蛋白血症[クリオグロブリン・クリオフイブリノーゲン]などによる[cES-p。 292、蛋白代謝異常〕。

 

毛細管支持組織脆弱化による紫斑

 A。老人性紫斑purpura senilis 〔Bateman 1835〕

 老人の主として手背・前腕伸側の萎縮した皮膚にごく軽微な外傷で斑状の出血が生じ、紫紅色より褐色に転じ、かつ反復する。弾力線維変性のような支持組織の脆弱化により血管が破れやすく、一寸柱や机の角に当ったくらいの外傷で発し、粗な結合組織の間に広く拡大。新旧が入りまじり、吸収も悪いので数週に及ぶ。OB。ステロイド紫斑steroid purpura

 ステロイド剤長期投与中〔内服または強い外用剤〕に生ずる紫斑で、女子かっ高齢者に多い。点状出血〔上肢・前胸〕と斑状出血〔四肢末梢および関節背面〕とがあり、ごく軽い圧迫で生ずる。ステロイドによる膠原・弾力線維〔支持組織〕の変化、小血管壁の変化に由来する。内臓出血合併の有無に注意。老人性紫斑と病因も症状もよく似て区別しがたいこともある。

 C 。 Ehlers-Danlos 症候群

 D。壊血病scurvy、 Skorbut
   ビタミンC欠乏で、血管壁が脆弱となり透過性が高まる。下肢仲側・鼻背などに、主として毛孔中心性に出血、歯肉出

 血腫脹・食思不振・全身倦怠感を伴い、幼児では骨端離脱を来す[Moller-Barlow病]。放置すれば貧血・衰弱死する。ビタミンC一新鮮野菜投与・現在はまれ。

E、デビス紫斑purpura Davis

  〔同義語〕女子〔再発性〕深在性紫斑〔多少異なるとの説もある〕、遺伝性家族性単純紫斑

  [症状]成人女子の四肢、特に膝蓋部を中心に生ずる紫青~紫褐色の小豆から指頭大の紫斑で、数個生じ、1週間ほどで消失。全身違和感・軽度関節痛を伴うことが多い。遺伝関係が認められ、毛細血管抵抗減弱の他、大した検査所見はない。

F。その他:悪液質・急性感染症など。

  black heel :運動選手の足底、とくに踵にみられる小出血点、角層内出血で、急激な停止〔バスケット・テニス〕により踵の皮膚が後方に水平に押され出血し、これが角層に出る。

うっ血性紫斑とアナフィラクトイド紫斑の症状、組織所見、治療

うっ血性紫斑stasis purpura、 purpura orthostatica 〔Schultz 1918〕

 〔症状〕内圧上昇によるもので、下腿[ときに前腕]に多い。大部分が静脈瘤性症候群あるいは動静脈瘻の1部分現象として生ずる、下腿下1/3に小出血斑が多発、ヘモジデリン沈着と化し、融合して黄褐~暗褐色斑となり、浮腫・硬化を伴いときに乳頭状に隆起したり、潰癪を形成する。

 〔組織所見〕毛細血管増殖・血管壁肥厚・出血・ヘモジデリン沈着・血管周囲性リンパ組織球浸潤・膠原線維増殖。

 〔治療〕基礎疾患の治療。

 


アナフィラクトイド紫斑anaphylactoid purpura その他、皮膚結節性動脈周囲炎・皮膚アレルギー性血管炎

anaphylactoid purpura〔Schonlein-Henoch〕

 〔症状〕


 1)前駆症状:頭痛一発熱・倦怠感・関節痛〔足・膝〕。

 2)皮疹:主として下腿一足背に、点状~爪甲大の紫斑が多発、硬く、わずかに隆起した紅色丘疹となる。まれに小水疱が混在。経過とともに、鮮紅→紫紅→紫青→黄色と変ずる。ときに大腿・上肢、さらには口腔〔口蓋・歯肉・頬粘膜〕・鼻腔をも侵す。

 3)全身症状:発熱・けいれん・血尿・蛋白尿・腹痛・下痢・下血。

 4)分類:次の3型に分けられる。

  a)単純型purpura simplex : 皮疹のみ。

 全身症状を欠く軽症。若い女子に多い。

  b ) Schonlein型p。 rheumatica : 関節症状〔腫脹・疼痛〕が強く皮疹も多型。

  c) Henoch型p。 abdominalis : 腹痛〔胱囲〕、下痢、下血、嘔吐など腸症状が強い。まれに腸穿孔。

 5)検査所見:血小板正常、凝固系正常、血沈促進、7-グロブリン上昇、好酸球増多、血中IgA ・ IgAIC 上昇、 CRP 陽性、 ASLO値上昇、血管壁・腎糸球体にlgA・C3の沈着。

 〔病因〕細菌〔とくに溶連菌上気管感染症に続発〕・薬剤〔ペニシリンアスピリン〕・食物Cミルク・卵〕に対するアレルギーもしくは自己免疫による免疫複合体病

 〔IC沈着によるleukocytoclastic vasculitis〕。

 〔組織所見〕真皮浅中層の浮腫と小血管壁の内膜膨化・フィブリノイド変性・血管周囲性多核白血球浸潤・出血、白血球核崩壊など壊死性血管炎の像・ IgA・C3沈着。

 〔予後〕反復することはあるが一般に良好。腎炎[メサンギウムにlgA沈着]併発に最も注意する。まれに腸出血、脳出血で死亡。

 〔治療3 ①安静、②アスピリンNSAID・抗プラスミン剤、③重症にはステロイド剤・免疫抑制剤、④感染病巣の処置〔抗生物質投与・剔除〕。⑤腎炎発生のチェックと処置、⑥血漿交換療法。

 

ウェーゲナー肉芽腫症Wegener's granulomatosis

 〔症状〕3期に分かつ。

 1)上気道炎症期:鼻炎〔鼻閉・鼻漏・出血など〕・鞍鼻・副鼻腔炎口内炎、咽喉頭症状〔嗄声・嚥下困難など〕、肺症状〔呼吸困難・咳など〕をもって始まる(rhinogenous granulomatosis)。

 2)全身撒布期:眼症状〔眼球突出・視力障害〕、耳炎、口腔症状〔潰瘍〕、皮膚症状〔紅斑・紫斑・中心潰蕩性丘疹ないし結節・潰瘍・腫脹〕、全身症状〔頭痛・発熱・疲労感・関節痛〕を呈する。

 3)末期:尿毒症〔巣状壊死性糸球体腎炎〕、肺炎、脳出血などで死亡。

 全経過は早く、半年から数年のうちに死亡。

 〔病因〕不明。膠原病・自己免疫疾患を思わせるが確証はない。

 〔検査所見〕低色素性貧血・白血球増多・好酸球増多・血沈亢進・高グロブリン血症・CRP陽性・リウマチ因子陽性・BUN上昇・蛋白尿・血尿・頭蓋、副鼻腔および肺に陰影、細胞性免疫低下。ANFは陰性。

 〔組織所見〕小血管と毛細血管の壊死性血管炎〔好中球リンパ球浸潤・フィブリノイド変性・血管壁破壊・血栓〕を生じ、次いで巨細胞を混じ、好中球・リンパ球・形質細胞・好酸球から成る壊死性肉芽腫となる。時期により種々の像を呈す。

 〔鑑別診断〕侵される血管が小動静脈であること、壊死性肉芽腫を生ずる点てPNと異なる。

 〔予後〕極めて不良〔腎不全て死亡〕。腎障害を伴わない限局型(limited form)は予後は良い。

 〔治療〕ステロイド剤、免疫抑制剤〔サイクロフォスファマイド・アザチオプリン〕、腎透析、皮疹には軟X線。

   近いものに壊疽性鼻炎がある。

悪性萎縮性丘疹症と側頭動脈炎の症状、組織所見、検査所見

悪性萎縮性丘疹症papulose atrophiante maligne 〔Degos 1942〕

  皮膚にわずかに隆起した黄赤色小丘疹が多発し、中央は白色に萎縮性に陥凹〔ulerythemeporcelaine en gouttes〕。体幹・四肢に多く顔面一手掌足底は侵されず、男に多い。眼球結膜や口腔粘膜にも同様粘膜疹を生ずる。年余にわたるうち、急に腹痛、腸穿孔を生じて死亡。真皮深層小動脈の内膜炎・栓塞による貧血性梗塞によるもので、同様変化は小腸粘膜にも生じて穿孔をきたす。脳・腎・心にも同様変化を生ずることがある。小動脈の内膜増殖・栓塞による楔状壊死。自己免疫・ウイルス・薬剤過敏症説。

 


側頭動脈炎arteritis temporalis 〔Horton 1932〕

   〔症状〕激しい頭痛・倦怠感一発熱・筋痛をもって始まり、側頭部〔片側または両側性〕に圧痛・発赤とともに索状硬結を生じ、紅斑・紫斑・小水疱・血疱・壊死をきたす。軽い発熱・眼症状〔眼痛・複視・視力低下・失明〕・脳症状〔頭痛・精神症状〕・顎関節痛〔外頚動脈分枝の顔面動脈閉塞による咬筋虚血による〕・筋肉痛・心症状〔虚血性心不全〕・間欠性跛行等を伴うことがある。

 〔組織所見〕動脈の線維増殖性閉塞性炎症で、末梢に巨細胞浸潤が多い〔巨細胞性動脈炎(giant cell arteritis)〕。内弾性板の変性、巨細胞・リンパ球・好中球・好酸球の浸潤、フィブリノイド変性による内膜肥厚・線維化、内腔閉塞。

 [検査所見]血沈促進、 CRP( +)、 RA(十)、抗核抗体(+)

 〔病因〕免疫複合体病(?)。

 [疫学]白人〔北欧・英・北米〕に多く、50歳以上に好発。わが国の報告例は約20例。

 [治療]ステロイド剤投与。

顔面肉芽腫、モンドール病、突発性壊疸


顔面肉芽腫granuloma faciale 〔Wigley 1945〕

  顔面に生ずる紅褐色、軟らかい浸潤局面。好酸球・奸中球の浸潤、核破片・フィブリノイド変性を伴う血管炎、山血かおり表皮・毛包との間には侵されない一帯を持つ。 leukocytoclastic vasculitis の慢性型か。

 

 

モンドール病maladie de Mondor 〔1939〕

 主として女子の前胸・腹壁に、縦走する索状皮下硬結で牽引痛がある。長さは数cmから 20cm に及ぶ。多くは1~3ヵ月で自然消失。多くの場合、その付近の外傷・炎症〔粉瘤化膿〕・手術〔乳房切断・開腹術〕に続発し(sclerosing periphlebitis of the chest wall)、リンパ管または静脈の増殖性閉塞性炎症である。男子の冠状溝・陰茎背に発することもある(nonvenereal sclerosing lymphangitis of the penis Hoffmann 1923)。

 

 

突発性壊疽spontaneous gangrene、 Spontangangran

 〔同義語〕閉塞性血管炎(thrombangitis obliterans ; TAO)、バージャー病(morbus Winiwarter-Buerger)

 〔症状〕25~45歳の男子を侵し、女子・老人にはまれ。下肢〔ときに上肢も〕片側性に倦怠感・冷感・蒼白化あり、次いで間欠性跛行(intermittierendes Hinken、claudicatio intermittens)を生ずる。患肢末端に疼痛が反復、有痛性皮下結節〔遊走性血栓性静脈炎thrombophlebitis migrans、 約30%に〕の先行・反復もあり、完全血管閉塞では疼痛のため横臥できない[起立によりhydrostatischにやっと血行がみられる]。患肢末端にチアノーゼ・紅斑・小出血をきたし、やがて壊死におちいり回復しない。壊死は趾・足・踵、ときに下腿に及ぶ。

 〔組織所見〕中・小動脈の高度の内膜肥厚・内腔狭小化、内弾性板の迂曲・断裂。

 〔病因〕大きな動脈[および静脈]の閉塞で、喫煙が最も影響する。自己免疫説

 〔抗動脈抗体〕・HBウイルス・梅毒・マラリア・チフス・内分泌障害の関与もいわれている。 HLA Bw5 2、 B5にリスクが高い。

 〔治療〕喫煙厳禁、寒気をさけ局所を清潔にする。血管拡張剤投与、交感神経切断も多くは一時的効果で、断趾・肢をつぎつぎと必要とする。

 

川崎病、急性熱誠皮膚粘膜リンパ節症候群 mucocutaneous lymph-node syndrome〔MCLS〕

 [症状]85%が4歳以下で男女比1。4: 1。

 1)前駆症状なく〔ときにカゼ気味]、原因不明の39℃前後の発熱が5日以上持続〔通常1~2週、ときに3~4週]、抗生物質に反応しない。発熱が11日以上続くと冠動脈瘤を発生しやすい。

 2)眼球結膜充血〔85~90%、毛細血管拡張のみで炎症状はない〕。

 3)急性頚部リンパ節腫脹。母指頭大より鶏卵大、圧痛強い、化膿自潰なし。60~70%。

 4)口唇の発赤・乾燥・亀裂[90%]、口腔咽頭粘膜のびまん性発赤〔90%〕、苺状舌(77%]。

 5)四肢末端の変化:急性期に手掌足底・指趾先端の紅斑〔90%〕と手足の硬性浮腫〔75%、圧痕を生じない〕、回復期に指趾尖の爪皮膚移行部より膜様落屑を生じ〔95%〕、浮腫消退とともに皺を生じ、約1ヵ月で治癒。1、2ヵ月後、爪に横溝をみる〔90%〕。

 6)体幹・顔・四肢に不定形発疹〔多型紅斑様・麻疹様・猩紅熱様・風疹様・じんま疹様〕が出没し、大きく地図状となることもある。水疱・鯔皮の形成はない。皮疹出現率90%以上。 BCG接種部位汪くに接種後4~6ヵ月〕に強く限局性紅斑をみること、 6。5%に無菌性小膿疱の見られることが最近追加された知見である。

 以上1)~6)が主要症状。

 7) MCLS顔貌。充血した眼球と口唇の発赤・腫脹・乾燥。

 8)心血管障害。急性期に70~80%に心障害。微弱心音・奔馬調律・心電図変化〔PR・QT の延長・低電位傾向・ST・T の変化〕・不整脈など心筋炎・心膜炎の徴候・冠動脈炎を高頻度に発し、冠動脈瘤を後遺症として残し、一部が狭窄・閉塞に進展して心筋梗塞発作や突然死を来す。心電図・心エコー・動脈撮影などでのチェックを続ける。

 9)その他。下痢・嘔吐・腹痛、蛋白尿、咳・鼻汁、関節痛、胆嚢腫大、髄膜刺激症状。

 〔検査所見〕血沈促進・白血球増多・核左方移動・血小板増多[100~150万〕・CRP(+)・ASLO(-)・トランスアミラーゼ上昇・α2グロブリン増加。

 〔組織所見〕乳頭層浮腫、血管周囲性リンパ球浸潤。血管炎の有無に両論あり。

 〔疫学〕昭和30年頃より発生、昭和42年以降急増傾向あり。生後6ヵ月~1年6ヵ月間にピーク、累積8万名を超える。

 〔予後〕比較的良いが、心障害は約17%に残り、これにより1~2%が死亡〔1歳以下男子に多い、突然死〕。再発例は2%以下。

 〔病因〕非感染説〔合成洗剤アレルギー・水銀アレルギー・ダニ抗原〕と感染説がある。後者にはリケッチア、細菌〔溶連菌・新サンギス・プロピオニバクテリウム・ダニペクター・エルシニアスドツペルクロージス]、カンジダ、ウイルス〔一般・EB・レトロ・新型〕がある。 1986年頃から米国でレトロウイルス説が相次いだが本邦では証明されていない。川崎は原因未確定であるが「感染症膠原病の中間型」と表現している。

 〔治療〕急性期は心管理のため入院させ、アスピリンを主体とした抗血栓療法、これにアークロブリン併用。輸液。回復後、冠動脈瘤の残った場合は抗血栓療法を続ける。冠動脈瘤は半数が1、2年の加療で治り得る。