運動性(ブローカ)失語と感覚性(ウェルニッケ)失語について


失語症は、要するにうまくしゃべれないわけですが、自発言語がうまくしゃべれない運動性失語(ブローカ失語)と、人の言うことがうまく理解できない感覚性失語(ウェルニッケ失語)の二つに大別できます。

運動性失語

運動性失語は、何かを話そうとするがうまくしゃべれないものです。たとえば、筆などをみせて「これは何ですか?」とたずねると、患者は何であるかはわかっているのに、「フ」とか「デ」という語が出ないのです。筆を使って字を書いたりはできるのに、「フデ」ということだけはできないのです。これは「フ」という音と「デ」という音を発するには口の形や舌をどう動かすのか、というソフトウエアが使えなくなった状況といえます。

また、「痛いという言葉をいってください」といっても患者はいえませんが、不思議なことに、間違って指を挟んだりすると「痛い!」と叫んだりすることはできるようです。要するに運動性失語とは、言語を発するためのソフトウエアの障害であり、左の前頭葉の一部に梗塞などが起こるのが原因です。なかなか治らないことが多く、まさにしゃべれないことでフラストレーションがたまるものなのです。

感覚性失語

一方、感覚性失語はペラペラしゃべれるのですが、他人のいうことがよく理解できないものをいいます。しかし、ペラペラしゃべっていても自分自身もよく理解はできていません。この失語は、耳で聞こえる音の意味を理解するソフトウエアの障害であり、前頭葉の障害ではなく、普通は左の側頭葉の障害で起こります。

感覚性失語は、かなり症状が軽快することもあります。感覚性失語の場合のフラストレーションは、運動性失語の場合よりは少ないのかもしれません。

その他

なお、運動性と感覚性の両方の失語があるものは全失語といわれます。また、これらの二つの大きな失語とは違って、だいたいのところ何とか話せるが他人のいうことをそのまま繰り返すことができにくい失語とか、意味は分かっているのに言葉が出てこない失語とかもあります。これらはすべて言語聴覚士が取り扱う後遺症になります。しかし、なかなか治らないものもあり、言語の障害も非常に奥が深いといえます。