日本語教室の開設支援


調査当時、県内には外国人住民の比較的多い6氏において10数室開設されているだけでした。この10教室を運営主体別にみると、市町村の国際交流協会によるものが1教室、ボランティアグループによる者が9教室となっていました。回答社の62%が何らかの方法で日本語を学んでいることがわかりましたが、学習方法として、こうした翻訳教室で学んでいると答えたのは、そのうち10.1%と低く、最も多かったのは独学の45%でした。一方、日本語を学んでいる人も学んでいない人も併せて、今後日本語を学びたい等回答は74%と高いものでした。つまり、日本語を学びたいのに、その学習環境が十分に整備されていないという状況が浮かび上がってきたのです。

このような状況を改善するためには、外国人住民の生活圏に日本語教室を解説していくのが最良との考えから、日本語教室開設支援の取り組みが始まりました。日本語教室という名が示す通り一義的には外国人住民が日本語を学ぶ場を創出することが目的ですが、ほかにもいくつかの意図があります。

まず、地域社会において外国人住民と日本人の出会いと触れ合いを学び合いの場をつくることです。外国人住民にとっては地域社会へ参加する一つのチャンネルであり、たんに日本語を学ぶだけでなく、その地域の生活習慣を学んだり、生活情報を得たりする場となります。日本人にとっては、多様な文化や価値観に出会うことによって世界観を広げ地域社会の在り方を見つめなおしたり、外国人との交流を通して自分とは異なる発想や価値観を持つ人に対するコミュニケーションの方法を身に点けたりする場にもなります。また、同じ地域に暮らす住民同士が集う場に、安易に日本語を教えるという行為を持ち込むことによって先生と生徒という縦の関係が固定化されてしまうことは避ける必要があります。そこで、こうした地域社会における日本語教室の考え方を浸透させるために日本語交流活動という言葉が使われています。

次に、外国人登録者数という数字からは決して見えてこない外国人住民の姿を浮かび上がらせ、日本語教室を通して当事者の声が発せられるようにすることです。特に日本人配偶者や技術研修生に成ると、家庭や会社の内側で何か困ったことやニーズがあったとしても、それが外に出てくることはあまりないようです。自治体も、そういった人たちとの接点がなければ、問題を把握することも困難です。しかし、日本語教室があれば、外国人住民が日々の暮らしでどのようなことに困っているのか、どんな要望をもっているのかをキャッチできるし、ボランティアは行政への橋渡し役としての役割も果たせるはずです。そして、外国人住民自身が主体的に地域社会の活動へ参画する道も開かれていきます