抗炎症鎮痛薬、ビタミンE、女性ホルモンはアルツハイマー型痴呆の補助的薬剤

 

 中核症状に効果のあることが証明された薬剤はアリセプトだけです。しかし、ほかにもいくつか可能性のある治療法があります。

 痴呆の中核症状とは脳の病変自体によって起こる記憶障害など、認知機能の低下による症状をいい、周辺症状とは、中核症状によって周囲とのかかわりの
なかで見られるようになる異常な反応や行動のことです。

 周辺症状に対しては、これまでもさまざまな薬剤がありましたが、中核症状を改善し病気の進行を抑えるものとしては、アリセプトが日本および世界で初めての薬剤です。そし て、今後、アリセプトに続く薬剤も次々と出てくるようです。

■抗炎症鎮痛薬

 抗炎症鎮痛薬を長期服用する慢性関節リウマチ患者はアルツハイマー型痴呆にかかりにくいこと、また同様の薬剤を用いている(ンセン病患者に老人斑が少ないことが報告されています。そこで、アルツハイマー型痴呆患者にインドメタシン(商品名=インダシン。ほか)を六ヵ月投与し四種類の知的機能試験を行ったところ、インダシンを投与した患者群に総合評価で改善が見られ、投与しなかった患者群では悪化したことが報告されています。さらに、非ステロイド性抗炎症薬を二年以上にわたって使用している患者群はアルツハイマー型痴呆の発症リスクが減少したことも報告されています°

■女性ホルモン

 統計調査を見ると、アルツハイマー型痴呆が特に高齢者の女性に多いことから、閉経後のエストロゲン(女性ホルモン)不足がアルツハイマー型痴呆に関係する可能性が考えられています。たしかに、エストロゲンアルツハイマー型痴呆の危険因子とされるアポリポプロテインEを低下させる作用、アセチルコリン合成酵素を活性化する作用、障害された神経細胞を修復する作用、さらには脳血流を増加させる作用、抗酸化作用などが認められています。エストロゲンの投与を受けていた群ではアルツハイマー型痴呆の発症リスクが低かったという報告はありますが、現時点では効果が報告ごとに異なるので、今後のさらなる研究が必要です。

■ビタミンE

 活性酸素などのフリーラジカルによる酸化が細胞の老化を促進することが最近知られ、抗酸化物質が注目を集めています。ビタミンEとビタミンCは抗酸化物質の代表的なものです。すでに述べた非ステロイド性抗炎症薬やエストロゲンの効果も、結果としてフリーラシカルを抑制するという意味で抗酸化作用に関係があるのではないかと考 13えられています。アメリカからの報告によると、健康人六百三十三人の追跡調査で約四年後に九十一人がアルツハイマー型痴呆を発症していますが、発症しなかった人のうちにビタミンE、あるいはCを内服していなかった人はI人もいなかったということです。これに対して、ビタミンEあるいはビタミンCを内服していなかった群では、約一四%がアルツハイマー型痴呆を発症したとのことです(Morris MC. Alzheimer Disease and Associ-ate Disorders 1998 \ 12 i 121-言。また、中期のアルツハイマー型痴呆患者に通常の必要量より多いビタミンEを毎日服用させた結果、症状の悪化が抑えられたとする報告もあります。